「何だったんだあれは・・」

 それは嵐のような一瞬の出来事だった

 いきなりぶつかってきて
 勝手に怒って去っていったあの女
 一体何様のつもりだ

 わたしの事も知らない風だった
 ・・・新入生か?
 だとしても、もう何度も全校生徒の前で話す機会はあった
 知らないとは言わせない

 わたしをキッと睨んで
 まるでこちらが悪いとでも言いたそうな・・
 随分と失礼な態度だ



 しかし、あれには笑わされた
 わたしに赤点を見られ
 真っ赤になって食って掛かってくる姿
 見事に散らばした答案を慌てて拾うその間抜けな様子

 思い出すとまた笑いが込み上げてくる
 からかい甲斐のありそうなやつだったな




「・・・・・・」

 不思議だ
 ただ、一人の生徒がぶつかってきただけだというのに
 それがどうしてこんなに気になっている?

 初めて会ったという感じがしなかった


 瞬きもせず
 じっとこちらを見つめてきた澄んだ瞳
 それをもうずっと前から知っているような・・・
 なぜそう思う?




 そうか 似ているのだ
 何度も夢の中で出会う少女に


 白い靄の中 ずっとわたしを遠くから呼ぶ少女
 なぜだか彼女には懐かしさを感じる
 しかし、そのような少女に会った事は実際ないはず・・・
 どうしてそう感じるのだろうか

 その夢の中の少女がわたしに囁く
 早く思い出して と
 目が覚めた後もずっと耳の奥に残る甘い声

 何もかも分からない事だらけの不思議な夢だ



 それを、もうかなり前から毎晩のように見続けている
 見ているというよりは、見させられている気さえする
 誰かがわたしの中の古い記憶を呼び起こそうとしているのか

 覚えの無い記憶を

 思い出すまで繰り返し
 何度も・・何度も・・・


 思い出してやりたい・・・
 だが、肝心な部分がどうしても思い出せない
 ずっと頭の奥に夢と同じ白い靄がかかっているようだ
 何かきっかけがあれば思い出せるのかもしれないが・・・

 まだ、その時ではないとでもいうのだろうか



「・・・・・・」

 その少女と先程の生徒のイメージが被る

 ・・・なぜそう思う?
 どこが似ているというのだ

 あんなお転婆な姿に共通点などないはずなのに



 あれが胸の中に飛び込んできた瞬間
 灰色だった世界に鮮やかな色が舞い込んできた気がした

 ずっと探していたものをやっと捕まえたような・・・
 あの感じは何だったのだろう



「・・・会長?」


「・・・!!」

 呼ばれる声に反応し
 はっと現実に戻る


「どうしたんですか?」


「ああ、すまん
・・・少し考え事をしていた」

 わたしとした事が・・・
 今は会議の最中だった


「・・どこまで話していたかな?」


 夢と現実を混同するとは・・・
 どうかしている


 だが、こうしている今この時も
 心の片隅で彼女の事が気になっている
 もう一度会えば何か感じるのだろうか


 また、出会えれば・・・