「はあ・・・気が重いなあ」
昨日の事・・・
みんなにどう説明したらいいんだろう
新しい敵が現れて
・・・まさかそれがセーラー戦士だなんて
それに、あの人達・・・
セーラースターライツって
彼女達もセーラー戦士?
敵なの?それとも・・・
「おはよう、うさぎちゃん」
「まこちゃん、亜美ちゃん
・・・おはよう」
「どうしたの?」
「遅刻しないのも珍しいけど
元気がないのはもっと珍しいな」
「うん、
・・・あのね」
「・・・あら?」
「なんだ?あの人だかり」
「???」
校門の前に女の子がいっぱい
誰か待っているみたい
「ほら、美奈子ちゃんよ」
「どうしたの?
すごい人だかり」
「知らないの?
あのスリーライツが転校してくるのよ!」
「ええーっ!!」
「うそっっ」
「それが本当みたいよ
学年も一緒だから
もしかして同じクラスになっちゃったりして!
・・・ふふふっ
アイドルの彼女になれるなんて、光栄ね!」
「おいおい;
生徒会長はもういいのかい?」
「それはそれ、これはこれよ!」
「へえー・・・アイドルがここにねえ」
どんな人達なんだろ
やっぱりオーラが普通の人と違うのかなあ
しばらくみんなと待機していたら
それらしき車が校門の前に止まった
「・・・ホントにきたわね」
「レイちゃん!
どうしたの?」
「あたしも一目見たくってね」
「学校、遅刻したって知らないよー?」
「何よ、
あんたみたいに毎日遅刻してるわけじゃないんだから
ちょっとくらい大丈夫なのよ!」
「何ですってーー!」
「あっほらほら
ドアが開くわよっ」
車のドアが開くや否や
一斉にみんな走り出した
「ぎゃん!!」
人ごみに押しのけられて後ろに転ぶ
あっという間に人の波が移動して
・・・残されたのは泥まみれになったかわいそうなあたしだけ
「いたたたた;
すごい人気だね、こりゃ」
よろめきつつにぎわいの元へ向かった
人ごみの先頭でみんなが話している
・・・あの2人が、スリーライツ?
「よっおだんご頭」
「・・・?」
頭上からあたしを呼ぶ声
なんだか聞き覚えがあるような
ていうか、おだんごって・・・
呼ばれた方向に目を向ける
「おまえもこの学校?」
「!?
あの時のっっ」
ちりちり頭の、なれなれしかったやつ・・・
「スリーライツって・・
あんたのことだったの!?」
あんぐりと開いた口がぱくぱくと空を食べる
びっくりしすぎて・・・声も出ない
「なんだ、やっとオレの魅力に気づいたか?
・・・何だよ、その土だらけの格好」
「だっ・・・
誰のせいでこうなったと思うのよっ」
「おだんごが、土まみれ
・・・泥だんごかよ
あははははっ」
「んむむむむっっ」
相変わらず失礼なやつ!
「オレの言った通りだったろ?」
「・・・?」
「また会おうぜ
って言ったじゃん」
「はあ?
・・・ただの偶然でしょっ」
まるで
再び出会うのが運命みたいに言うんだから
意味分かんない!
「おまえさあ
『偶然』おれと同じクラスになりたいか?」
「冗談じゃないわっ誰があんたなんかと!」
「素直になれよ、お・だ・ん・ご?
・・・じゃなっまた後で」
「べーだ!!」
前を通り過ぎて立ち去っていく後姿
それに舌を出して見送った
「あーもうっ何よあいつ!」
「ちょっとうさぎ!」
「なんで星野と知り合いなの?」
「えっ・・・
うーんまあ、色々あってさ」
「信じらんない!」
「あたしだって信じられないよ」
こんな所でもう一度会うなんて
これで本当に同じクラスになったら・・・どうしよう
「というわけで
今日からこの3人が新しい仲間になることになりました」
「大気光です」
「・・・夜天光です」
「星野光です、よろしくっ」
「皆さん、分からないことは教えてあげてください」
「・・・ううっ」
やっぱりこうなるのね・・・
「では、空いてる席に座って」
「オレ、ここね」
「ぐっ・・・」
あたしの後ろに座ってきた
・・・わざと狙ったわね
「うさぎちゃん、やったね!」
夜天君の隣をゲットした美奈子ちゃんが
こっちを向いて親指を立てる
全然良くないよっっ
「よろしくな、おだんご」
「またその呼び方するのっ?」
「おまえの名前、知らないもん」
「・・・月野うさぎよ」
「月の兎? あははは!!
そりゃいいな、ぴったりな名前で」
「何がおかしいのよ」
「だってさ
やっぱりおだんごじゃん?」
「は?」
「十五夜の・・・月見ダンゴ?
おまえ『つきのだんご』に改名しろよ」
「なんですってー!
人の名前で遊ばないでっ」
何よこいつ・・いちいち絡んできて
落ち着いて勉強も出来やしないわ
・・・どうせしないけどさ
「あのさあ、月野だんご」
「だーかーらー!
あんた・・人の話聞いてる?ちょっとっ」
「・・・君も、人の話聞いてるかい?
月野君」
「あうっ・・・」
いつの間にか横に来ていた先生が
あたしの頭をこつんと叩いていった
「あーあ、怒られてんの」
「・・・あんたのせいじゃない
もう話しかけないでよっ」
前を向いて無視しようと決めたのに
その後もずっと髪をつついてくる
「・・・あーのーねー」
「なあなあ、オレ部活に入りたいんだけど
何かいいのない?」
「はあ?知らないわよそんなの」
「放課後案内してくれよ
よろしくっ!」
「!!
・・・もうっ」
人の話を全然聞かないで話を進められた
何て勝手な人なのっ
・・・捕まる前にさっさと帰っちゃおう
「さあ、どこから連れてってくれるんだ?」
「やーめーてー;」
さっさと荷物をまとめて帰ろうとしたのに
教室を出ようとしたら待ち伏せていた星野に
すかさず腕を捕まれた
「まずは運動部だよな!」
「・・・いっとくけど
あたしそんなに部活なんて分からないわよ
どうしてもっと詳しい人に聞かないの?」
「じゃあ、誰なら詳しいんだよ」
「誰って・・・」
・・・生徒会長なら詳しいのかな
学校の事、全部知っていそう
あたしったら・・・何考えてるんだろ
ふとした時につい彼の事が頭に思い浮かぶ
最近よく屋上に足が向いてしまうけど
さすがに今日は行けない・・よね
別に元から待ち合わせしてるわけじゃないし
いいんだけどさ
なぜだか今この時も
あの人が待っている気がして・・落ち着かない
「どうした?
ぼーっとして」
「・・・っ!
別にっどうもしてないよ
・・・あんたさあ
学校の制服、どうして着ないの?」
「こっちの方がかっこいいじゃん
アイドルだからさ、格好もちゃんとしないとな」
得意そうに襟を立てる
「アイドルだからって
特別扱いされていいと思ってるの?」
「いいじゃん
オレに似合ってるだろ?」
「・・・もうっ」
アイドルって我が侭って聞くけど
本当なのね
「おっあれいいじゃん!
おだんごっ行くぞ」
「ちょっと!ひっぱらないでよ」
無邪気に手を引いてぐいぐいと連れて行かれた
たまに振り向いては爽やかな笑顔をこっちに見せてくる
なんか端から見たら青春ドラマのワンシーンみたいかも・・
意外と恥ずかしい事を平気で出来るところが
やっぱり普通の人と違う感じ?
体育館ではバスケ部が練習の真っ最中だった
「星野さーんっ頑張って!」
いつの間にか美奈子ちゃんたちまで集まって・・・
体育館の中はギャラリーでいっぱい
声援を背負って星野が走り出した
バスケ部の人達を軽やかに追い抜いて
次々とゴールを決めていく
「遊んでますね」
「ガキっぽいんだよ、星野は・・・」
「まだまだ甘いんだよ!」
ダンクシュートが華麗に決まった!
女の子の声がひと際大きくなる
「ほほーっ」
さすがにアイドルはオーラが違うわ
プレッシャーも応援も
すべて受け入れて自分の力にしているみたい
「すっごいな!」
「かっこいいわね!」
「ホントすごいわー!」
「レイちゃん!なんでここに?」
「学校終わって全速力で走ってきちゃった!
もうへっとへとだけど
あの姿を見れたと思うと疲れも吹っ飛ぶわねっ」
「遅刻に早退ですか
いいですねー・・・お嬢様学校は自由で」
「何よっ
ちゃんと掃除も済ませてきたわよ!」
「あれっ美奈子ちゃんは?」
「・・・さっき大気さんを小脇に抱えて
文化部の方に行ったみたい」
「はあー・・・美奈子ちゃんってすっごい」
「他のファンの子たちも遠慮して近寄らないのに;」
「おーいっおだんごー!
ちゃんと見てたか?オレのファインプレー」
こっちを見上げて名指しで叫んできた
周りの視線が一気に集中する
「だーかーらーっあたしはおだんごじゃないってば!
恥ずかしいから叫ばないでよっっ」
「ごめんごめん!でも惚れ直したろ?
次はどこいくー?」
「そんなの知らないわよっ
あたしもう帰る!」
「・・・うさぎちゃん」
「ほえ?」
後ろから言い様のない威圧感が漂ってきた
「どうした?おだんご」
「・・・何でもない」
すごい迫力でみんなから突っ込まれて
結局最後まで星野に付き合う羽目になりそう;
「で、・・次はアメフトなわけ?」
体育館からグラウンドに移動した
「かっこいいオレにぴったりだろ?」
「どこがっ」
言い合っている目の前に
ボールが転がってくる
それを拾い上げて
キラっと光る瞳がこっちを向いた
「・・・おまえ、オレのタッチダウン
見たいだろ?」
「無理よ!十番高校のアメフト部って
強いんだから」
その言葉が
より彼の戦闘意欲を掻き立てさせる結果になる
「見せてやるよ!
ここにちゃんといろよっ」
「ちょっ・・ちょっと!」
無邪気な様子で
ボールを小脇に抱えて走り去っていった
「何よ、あれ」
人をあちこち振り回した挙句
結局毎回一人だけ楽しんで・・・
強引・・というよりは
何だか良い様に振り回されてる気分
でも、不思議と憎めない
人懐こい笑顔を見せられるとなぜか断れなくて
つい最後まで付き合ってあげちゃったけど・・・
すごく生き生きしている姿を見せられて
結構こっちもわくわくさせられた
アイドルも、大変なのかな
どこに行ってもスリーライツとしての彼を求められて
休まる場所もないのかも
本当の自分を隠してアイドルを演じていたりして・・・
それって、なんだかあの人とちょっと似ている
こうして、あたしを色々と連れまわしたりするのも
あたしがアイドルの『彼』をあまり知らないから?
きっと、ずっと友達が欲しかったんだろうなあ・・・
学校にいる時くらい
遊びに付き合ってあげても良いかも
「おだんごーーっっ見てるかー?」
「はいはい、見てるわよっ」
大きく手を振ってくる笑顔に微笑み返す
一通り付き合わされてようやく解放された時には
もうすっかり日が暮れていた
「はー・・・やっと帰れるよ
でも、意外と楽しかったかも」
下駄箱から靴を出して
揃えて足元に置く
また明日もこんなのんびりした日だと良いな
「うわあああ!!」
「!?」
外から男の人の・・・悲鳴!!
慌てて靴を履き、その元へ全速力で向かった
強い光が辺りを覆う
近くまで来て身を隠した
あれはさっきの・・アメフト部の
ファージにされちゃうの?!
また、普通の人が犠牲に・・・
「みんなに・・・知らせないと!」
まだ校内にいるはず
急いで通信機に呼びかけた
「みんな、校庭に来て!
・・・・っ
敵が現れたの、早く!!」
敵出現の事実をついに告げてしまって
胸の奥がきゅっと痛む
・・・どうしよう
みんなが来るまでここにいる?
ううん、それだと間に合わないよ!
逃げてなんて、いられない
あたしがみんな、守る!!
声高らかに変身の言葉を叫んだ
「ムーンエターナルメイクアップ!」
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