セレニティが部屋にいない
・・・また抜け出したか
逃げられるわけがないのだから
大人しくしていれば良いものを・・・
どこまで歩いても出口がない・・・
分かっているけど・・・じっとしていられないよ
頭が痛い・・・
このままこの星で力尽きるのを待つだけなんていやだ
・・・体に力が入らない
視界がぼやけてく
・・・向こうから近づいてくる足音が聞こえる
・・・・・・
そのまま意識が途絶えた
「・・・ここにいたか」
もう何度同じ事を繰り返したか分からない
そんなにあきらめきれないのか
部屋に連れ帰りベッドに戻す
ぐったりと目を閉じたままだ
・・・体力も大分限界のようだな
「・・・・・・」
頬に触れてみる
なぜこんなに惹かれるのか
自分でも分からない
透き通る白い肌 柔らかい唇
「・・・セレニティ」
そっと唇を重ねた
「・・・ん・・・」
頭が・・・くらくらする
力が入らない
・・・唇に温かい感触
まもちゃん?
・・・・・・違う!!
「・・・いやっ!!」
力をふりしぼってはねのけた
「・・・・・・」
「・・・はあ・・・はあ」
拒絶されるのはいつもの事だが・・・
「・・・セレニティ」
「!!」
体を引き寄せ強く抱きしめる
「・・・苦しい・・・やめて!」
強引なのはいつもの事だけど・・・
今日は何か違う
「セレニティ
今日はいくら泣かれてもやめるつもりはない」
「や・・・いやっ!!」
乱暴に押し倒された
手首を強くつかまれて身動きがとれない
・・・恐い!!
「・・・ひどいよ・・・乱暴はいや・・・」
涙声がかすれる
「・・・そんなにわたしが嫌いか?」
「・・・・え?」
「触れられたくないくらい・・・嫌いか?」
今まで見たことのない真剣な眼差し
・・・その瞳から視線が逸らせない
「・・・・・・」
「・・・・・・」
長い沈黙
あたしのこたえを待っているの?
・・・分からない
何て言えばいいのか・・・
「わたしを・・・受け入れてみろ」
「・・・デマンド」
「わたしと体を重ねるのは
これが初めてではないだろう
それほど嫌ではないはずだ」
心臓がどきどきしている
音がここまで聞こえてきそう・・・
あたしは何を迷っているの?
受け入れるなんて・・・できるわけないのに
強引さにひきずられて何も言えなくなってしまう
「・・・お願い
あたしを誘惑しないで」
精一杯のこたえだった
「遠くの男に義理だてする必要はない
わたしに身を任せるのだ
堕ちろ」
強引な瞳に捕らわれて身動きできない
・・・敵わない
もう・・・だめ
腕の力が抜けた
「・・・・・・」
「それでいい」
・・・捕まえた
「そのまま大人しくしていろ」
唇が首筋に落ちる
「・・・ん・・・・・」
荒々しい息と
ベッドがきしむ音だけが響く
何も考えたくない・・・
楽になりたい
このまま身を任せて楽になれるならもう・・・
・・・ちがう
心が叫ぶ
唇が違う ぬくもりが違う
「・・・いやっっ!!」
「!!」
全力で腕を振り払った
「はあ・・・はあ・・・」
「・・・なぜだ」
「違う
・・・あなたじゃない」
・・・なぜかたくなに拒む?
遠くの男のことばかり想い続け
近くにいるわたしをなぜ見てくれない
どうして伝わらないのだ
「・・・ごめんなさい」
・・・・・・
自分のものにならないのなら
・・・いっそこの手で
「セレニティ・・・」
気が付いたら手が勝手に動いていた
その白くて細い首に
少し力を加えれば永遠にわたしのもの・・・
「・・・デマンド?」
「!!!」
わたしは・・・何を
首にかけた手を戻した
「・・・・・・?」
・・・自分の考えが怖くなった
なぜあんなことをしようとした
・・・何を恐れている?
こうして手を延ばせば触れられる距離にいるというのに
いくら心の中に未練が残っていようと
今、傍にいるのはわたしだ
「・・・くくく・・・」
「デマンド?」
「違うだと?
・・・本当にまだ覚えているのか
あの男のぬくもりを」
「・・・覚えてるわ」
「嘘だな
何度もわたしのぬくもりに触れて
体の隅までわたしに馴染んでいるというのに
・・・おまえの体はもうあの男のことなど忘れている
いい加減気付け」
「・・・・・・」
「図星だろう?
あとは
その記憶の片隅に残った存在をわたしが消し去るだけだ」
追い詰められて体を倒された
デマンドの瞳がゆっくり近づいてくる
・・・動けない
「や・・・めて」
「さっき言った事を忘れたのか
今日はやめるつもりはない
受け入れられないなら奪うまでだ」
「やっ・・・んん・・・」
「・・・その唇も なにもかもすべて
誰にも触らせない」
「体をいくら奪っても・・・心は渡せない」
「そんな言葉は信じられないな
おまえはさっき一瞬だがわたしの誘いに乗った」
「!!
あれは・・・違うわ」
「何が違う?
このまま身も心もわたしのものになれ
・・・はやく堕ちてしまえ」
「・・いや・・・・」
強い瞳に捕らえられて逃げられない
まもちゃん・・・
あなたがどんどん遠くなっていくよ
|