「・・・ん・・・」

 あたし・・・どうしたんだっけ
 いつの間にかベッドで寝てた?


「起きたか」

「!!」

 デマンドが椅子にもたれたままこっちを見ていた

「ずっとそこにいたの?」

「・・・ああ」



 記憶が曖昧で・・・思い出せない

「・・・酔いはさめたようだな」

 デマンドが近づいてきた
 あたしの横に腰をおろす


「酔いって・・・

あたしにお酒を飲ませたのね!」

「・・・おまえ自分で勝手に飲んでいただろう」

「あれ?

・・・そういえば そんなだった気も」

「覚えていないのか?」

「えーと・・・・・・ほとんど何も」


 ・・・恥ずかしい
 あたし何かしたのかしら

「・・・色々とおもしろかったな」

「!!」

「あんなにかわいい声で甘えてきてくれたのに
・・・覚えいなくて残念だ」

「えっ・・・あ・・・・・」

 頭の中がぐちゃぐちゃ・・・
 必死で思い出そうとしてるのに全然思い出せないよ



「・・・くく」

「?

・・・嘘ついたの?!」

 あたしの慌てる様子をみて楽しんでる
 デマンドに良い様に弄ばれてるみたいで悔しい

「軽い冗談だ

酔った女を好きにする趣味はない」


「・・・」

 ・・・ほっとした




「もしかして・・・ここまで運んでくれたの?」

「ああ・・・随分と重かったな」

「・・・それはどうもすみませんでしたね」

「くくく・・・」

 ・・・さっきから遊ばれてるの?

 からかうとおもしろい
 むきになってかかってくる



「・・・セレニティ」

 髪の毛に触れようとする

「!!!」

 ものすごい勢いで避けられた


「あ・・・ごめんなさい」

 ・・・傷つけた?

「・・・・・・」

「・・・・・・」



 和やかだった空気がいきなり張り詰めた
 沈黙が・・・辛い


「・・・何かされるとでも思ったか?」

「あの・・・」

 心臓の鼓動が速くなる


「・・・今 何を考えていた?
言ってみろ」

「あっ」

 体を無理矢理引き寄せる

「やっ・・・離して」

 抵抗しても力では敵わない
 きつく抱きしめられて逃げられない・・・


「別に酔わせなくとも
好きなときに好きなようにするだけだ」

「んんっ・・・」

 唇を強引に塞がれる


「・・・わたしの目を見ろ」

「・・・」

 その瞳に見つめられると何も言えなくなる
 思わず目線を外した

「わたしだけを見ているのだ
その瞳に映していいのはわたしだけだ

わたしに忠誠を誓え」



「あなたなんて・・・きらいよ」

 震える声を絞り出した

「・・・おまえの気持ちなどどうでも良い
おまえに自由は一切ない

セレニティ
籠の鳥ということを忘れるな」

「んっ・・・」

 唇を重ねる


「あっ・・や・・・」

 そのまま押し倒した
 彼女の気持ちなど知るものか
 強いほうが制するのだ

「やめてっ・・・いや・・・」

 言葉は出ても体の自由がきかない・・・


「・・・本気で嫌がっているようには見えないな
心は拒否していても体はわたしに馴染んできた

・・・愛撫にも応える」

「・・・あっ・・・」

 首筋に唇が伝う
 ぞくっとして体が反応する


「・・・ん・・・」

「・・・キスも大分受け入れてくれるようになった」

「いや・・・」

 ・・・頭がくらくらして
 体に力が入らない

「・・・何も考えるな」

「・・・・・・」

 甘い誘惑に誘われそう
 そんな弱い自分が・・・いやだ


 このまま・・・抵抗するのを止めたらあたしはどうなるの?




 ・・・もう どうしたらいいのか分からない



「・・・・・・」

「セレニティ・・・」





「・・・く・・・・・ひっく・・・」

「!」

 涙が・・・止まらない
 どうして・・・

「・・・えっく・・・まも・・ちゃん」


「・・・・・・」


「・・・・・?」



「・・・気が変わった」

「デマ・・ンド?」

「まだ酔いが抜けてないだろう
・・・休め」

 涙をぬぐい頬に軽くキスをされた

 初めて見せた 優しい一面


「・・・ありがとう」

「礼には及ばん
ずっと我慢するつもりはないからな

・・・今回だけだ」


「・・・ごめんなさい・・・あたし・・・それでも」

「・・・もういいから寝ろ」


「あの・・・見られていると寝にくいんだけど」


「寝るまで横にいるくらい許せ

・・・それとも続きをするか?」

「・・・おやすみなさい」


 ・・・視線が気になって寝れるわけないよ
 でも、ずっと一方的に強引なだけだったから
 ちょっとびっくりした

 もう少し心を開いて接することができれば
 彼の事も理解することができるかもしれないけど・・・

 ごめんなさい、デマンド


 ・・・会いたい
 まもちゃん


 ・・・・・・




「・・・いくらなんでも早すぎないか」

 あっという間に寝息を立てて熟睡してしまった
 何が見られてると寝れないだ・・・

「・・・ん・・・」

 夢の中であの男と会っているのだろうか
 わたしに見せるのは泣き顔ばかりだ

 頭をそっとなでてみる


「安らいだ顔を見せるのは・・・寝ている時だけだな」