「わたしのぬくもりをもっと感じて欲しい・・・」


「・・・デマンド」

 彼のぬくもりに包まれて
 もうあたしは半分夢心地だった


「おまえを・・・
身も心も溶かして気持ち良くしてやりたい」

「・・・あ・・」

 あたしの首筋にそっと触れる唇
 銀色の髪が肌を伝っていく
 さらさらとした髪の筋が素肌にとても心地良い

 その滑らかな髪の毛に触れてみた


「・・・っ!・・」

「デマンドの髪・・・綺麗ね
さらさらしてて気持ちいい・・」

 わたしの頭を撫でてくる
 その甘美な指先についまどろんでしまいそうだ


「・・・好きなだけ触れていろ」

 柔らかい手の感触に酔いしれながら愛撫を続けた


「・・・・ん」

 うなじをしなやかな指先が撫で回してくる

 首筋を這う舌がゆっくりと上がってきた
 寄り添う唇から吐息が漏れて耳元にかかる


 すべての仕草から彼の優しさと愛情が伝わってきた
 それが心の奥まで染み渡る



 段々と・・・体が火照ってくる


「・・・ん・・・あうっ・・・」

 耳筋を舐められて声が漏れた
 彼の髪に触れる手に力がこもる


 違う・・・
 無理矢理体を奪っていた時とあきらかに反応が違う

 その漏れる吐息も わたしの愛撫に素直に応える体も
 艶かしい表情もすべて初めて見た


 ・・・胸の奥が熱くなる
 もっと夢中にさせたい

 今この刹那だけでもいい
 すべてを忘れ わたしだけ感じていて欲しい


「・・・もっと気持ちよくしてやろう

目を閉じてじっとしていてごらん」

「・・・・・・」

 髪を撫でていた手をぱたりと落とし
 言われるがままに瞳を閉じた

 視界が閉ざされると急に緊張してくる・・・



 わたしに従順な彼女を見るのは新鮮だった
 今なら何をしても従ってくれそうな気がする


 ・・・心に欲望の火がついた
 このまま骨の髄まで貪り尽くしたい衝動に駆られる



「・・・・っ・・」

 ・・・だめだ

 やっとわたしを受け入れる覚悟をしてくれたというのに・・・
 わたしを信用して身を預けている彼女を裏切る事は出来ない
 今は己の満足よりも彼女の信頼を得る方が大切だ

 一瞬沸いた欲情を理性で必死に抑える



 一旦耳元から唇を離しそのまま下に潜った
 ゆっくりと腹部から上に添って舐め上げる


「あっ・・・んんっ!・・」

 汗ばむ体を伝う舌先の動きに神経が集中する
 移動する舌に合わせて快感が迫り上がってきた

 感覚がどんどん研ぎ澄まされていく


「やっ・・あっ・・・そんな」

 胸の先まで到達すると先端を舌先が優しくつつき回してきた
 唇がついばむように動く

 舌先に力が加わり肌に強く押し付けられた


「・・・っ!・・・はあ・・・んん」

 唇の動きに体が敏感に反応している

 デマンドの口の中が熱い・・・
 それが肌を通して伝わってきた



 白い肌が火照って鮮やかな桜色に変わっていく
 悶える声が妖しいほどに艶かしくてぞくっとさせられる


 手のひらで胸を包み込んだ
 そのまま膨らみを確認するかのように揉みしだく

 もう一方の腕は腰を伝い
 滑らかな太もものラインを撫でさすった


「は・・・はう・・・んん・・」

 優しくて・・・激しい愛撫がどんどん体の芯を溶かしていく



「デマ・・ンド」

「・・・何だ」

「や・・・優しい・・すごく

どうして・・・」


「優しくして欲しいと・・・言ってくれたではないか

・・・嫌か?」

「はうっ・・・い・・・やじゃない・・

・・・あっ・・!」

 太ももを撫で回していた指先がその奥に伝っていく


「や・・・そこは・・・・・・ああっ」

 指先がゆっくりとあたしの中に侵入してきた
 どんどん奥に迫ってくる


「んんっ・・・はあ・・・あうっ」

「すごく・・・熱いな」

 そのまま既に潤っている内部をかき回す


「だめっ・・そんなに・・・しちゃ・・・」

 背筋がぞくぞくする

 頭に靄がかかって体に力が入らない
 もう・・・自分が分からなくなりそう


 ゆっくりだったり 時には激しかったりする指の動きが
 あたしの声を荒く変える


「あっ・・・いやっ・・もう・・・ああんっ・・・」

「・・・セレニティ」

 彼女の溶ける声にわたしの心もどんどん溶かされていく
 ・・・我を忘れそうになる


「可愛らしいわたしの女神

・・・もう離したくない」

 指で中を弄ぶ一方で
 もう一方の手が胸の膨らみをひねくる


「・・だめっ・・・・は・・・激し過ぎ・・・

・・・んんっ・・」

「・・・っ・・」

 艶やかな声を唇で塞いだ


「・・・・・はあ・・・んんっ・・・」

 求められるキスがすごく気持ちいい・・・
 熱い唇が触れると体に電流が走る


「ん・・・・はあ・・・はあ・・」

 漏れる息がとても熱い
 とろけている瞳がこちらをじっと訴えかけるように見つめてくる
 もはやすぐにでも果てそうな様子が伝わってきた

 このまま満足させても良いが・・・


 彼女の耳元で囁く

「セレニティ

わたしが欲しくなったら口で伝えろ」

「えっ・・・やだっ・・・
そんな・・・」

 もう・・・ほとんど溶かされているあたしの体を前にして
 そういうこと言わせる気なの

 ・・・いじわるだ


「は・・・恥ずかしいよ・・・」

「・・・求められるまでこのまま続けるぞ」

「だめっ・・・!!・・・あうっっ」

 続けられる愛撫に体が敏感に反応して反り上がった

 ・・・頭の中が混乱していて何も思い浮かばない



「・・・中々しぶとい体だな」

「や・・・・・ああっ」

 執拗に指先が中をいじる


 既に体は受け入れる準備が整っている
 もう 今すぐにでも限界が来るのが分かる・・・
 これ以上続けられると
 自分がどうなってしまうのか見当が付かない


 もう・・・だめ・・・




「んっ・・・ほ・・・欲しい あなたが

お願い・・・・・・して」

 艶かしい吐息が耳元に囁いた


 わたしを求める声
 その言葉をどれだけ切望していたか・・・

 その口から聞かされるまで自分でも気が付いていなかった


 指先の動きを止め そっと引き抜く


「んんっ

・・・はあっ・・・はあ・・・」

「・・・・・・」

 無言のまま
 瞳がすべてを理解しているとでも言うように
 あたしを覗き込んできた


「・・・!」

 太ももを開かれる
 その上にそっと体を重ねてきた


 じっと見つめてくる鋭いけど熱っぽい瞳
 ・・・その眼差しに体が支配されて動けない

 今までその瞳から何度も逃れようとしてきたけれど
 ついに捕まってしまった


「デマンド・・・」


 わたしから目線を逸らさずに正面から向き合ってくる
 その瞳を・・・もう逃がさない


「おまえをわたしのものにする

二度と・・・帰さない」

 口元が妖しく笑む


「!!」

 戦慄が走った
 その言葉に一瞬心が怯む

 あたしの動揺に気づいたのか
 彼が少し悩む風を見せたように見えたけど


 ・・・すぐにその顔が戻る



 あたしに心の準備をする間を与えてくれず
 体が重なってきた


「やっ!・・・あっ・・・
・・んんっ・・・だめっ・・

は・・はうっっ」

 セレニティが目を硬く閉じる


「んん・・・・・・くっ・・・」

「・・・っ」

 少し辛い顔を見せたがその体は充分開けていた
 さほど抵抗もなく わたしの体が彼女の中に沈んでいく


「ああっ!・・・・・は・・・入ってくる・・

あ・・・熱いよ・・」

 辛苦の表情が見る見る妖艶なそれに変化していく
 そのまま奥まで侵入するのは容易いことだった

 ・・・すぐに果てに行き着いた



「中が・・・すごく潤っているぞ」

「・・やだっ・・・」

 恥ずかしそうに顔を伏せる
 こちらに向けられた艶やかな耳筋に唇を寄せた


「・・・ん・・」


「おまえの中は温かい

・・・すごく心地良い」

 小さな体をきつく抱きしめる


「デマ・・ンド」

 背中に腕を回して汗ばんでいる彼の体に抱きついた


「・・・・・・」

「・・・ん・・・」

 一体感を噛み締めるように
 そのまま少しの間抱き合っていた


 胸もどきどきしているし体も 息もすごく熱い
 だけど・・・不思議と落ち着いてくる

 ずっとこうしていたい


 彼女の心臓の音が肌に直接伝わってきた
 とろけそうなくらい柔らかい彼女の中
 温かいぬくもりに包まれて
 このまま まどろみそうになる

 ・・・だが一方でわたしの情熱がそれを拒否する


「・・・あっ・・・んっ」

 デマンドがゆっくりと動き始めた
 その動きが、内部から体全体に行き渡る

 一旦落ち着いた心に再び火がつけられた


「んっ・・・んんっ・・・」

 体がゆるりと引いて行く

 でもすぐに奥まで押し戻される
 それが何度も執拗に繰り返される


「はうっ・・・」

 どうしよう・・・なんだかすごく気持ち良いかも

 動きに合わせて徐々に快感が全身へと伝わっていく


「あっ・・んっ
・・・い・・いい・・・よ」

「!!」

 背中に回っている彼女の腕が強く絡みついてきた


「・・・っ・・・」

 ただそれだけのことなのに心が打ち震えた

 今まで何度体を奪ったか覚えてはいないが
 欲望が晴れることはあっても
 満ち足りた気分になることはなかった

 ・・・こんな気持ちを感じたのは初めてだ
 その熱い体を力いっぱい抱き寄せる


「もう・・・逃がさない」

「んんっっ・・・あっ・・・あうっ」

 柔らかな頬にキスをした

 漏れる声があまりに魅力的で
 唇を塞ぐ事すら惜しい


「もっとかわいい声を聞かせろ・・・」

「あっ・・・ああ・・」

 抱きしめる腕がうなじを伝い
 背中を撫で回す


「はうっ・・・」

 ・・・もう・・限界・・・


「デマンド・・

あ・・あたし・・・」

「・・・どうして欲しい?」

「・・・ん・・」

 心も体も溶かされて・・彼の言葉に従うしかない



「・・・して
・・・もっと・・気持ち良く・・・」

「・・・・・・」

 無言のまま口元が緩んだのが見えた



「あ・・・んんっ!」

 腰の動きが段々と激しくなっていく


「・・・っ・・はあ・・・」

 デマンドの息が荒くなってきた
 耳元にかかる吐息が激しい


「んっ・・・あう・・

・・・・・・?」

 ふと 密着していた肌が離れた


 そのまま太ももを高く持ち上げられる
 両腕で足を抱えられた


「え・・あっ・・・」

「・・・・・・」

 困惑する表情がこちらをじっと見つめてくる
 そのあどけない瞳がこれからされる事でどう変わるのか
 単純に興味が沸いた

 体重をかけてそのまま体の一部を押し込める


「・・・・・・!!
・・・あっ・・・ああっっ・・だめえっ」

 容赦なくより深い角度で中に侵入してきた


「いやっ・・・やめ・・」

 今までされたことのない体位に戸惑いが隠せない
 こんなに奥の方まで踏み込まれた事はなかった

 背筋がぞくぞくして頭の中が真っ白になりそう・・・
 思わず首を振って悶える


「やだっ・・・ちょっと・・待っ・・・」

「・・・気持ち良くなりたいのだろう?」

 いじわるな笑みがあたしを見下ろした


「・・・っ・・・」

 やめてと言ってもやめてくれる人でないのは分かっている
 もう・・・されるがままにそれを受け入れるしかない
 唇を噛み締めて耐えた


「・・・っ・・んん・・・」

 されている事に翻弄されつつ酔いしれている
 その姿に心がかき乱される

 ただ夢中になってひたすら動いた


「んんっっ・・だっ・・だめ・・・」

 両足を担がれたまま
 奥の方が突かれて何度も刺激される

 あまりの衝撃に体が耐えられそうにない


「あうっ・・・気持ちよすぎて・・・もう
何も考えられ・・・な

・・・ああっ」

 激しい動きで彼の汗が雫となり、体に降りかかってきた


 今にも果てそうだと潤んだ瞳が訴えてくる
 その眼差しに魅せられて
 どんどん快楽の渦に巻き込まれる

 こちらも限界が近づいてきた・・・



「何も考えなくていい
考えるな

・・・イってしまえ」

 容赦なく動きを速めた


「あっ・・・ああっっ」

「・・・っ!・・・」

 快感が全身に伝わっていく
 デマンドも・・・もう


「んんっ・・・・だ・・め
・・・ああん・・・!!」

 視界がぼやけてくる


「・・・愛している」

 その言葉を最後に周りの音が消えた


「・・っ・・・・んん・・」

 心が・・呑みこまれていく










「・・・・・・・・・」

「はあ・・・はあ・・・・・」

 意識が・・・うつろ


 あたし・・・どうなったの



「デマ・・ンド・・」

 体中が痺れていて動けない
 今やあたしの体は肩で息をすることで精一杯だ


「大丈夫か?」

 視界が少しずつ戻ってきた

 少し心配そうな瞳が覗き込んでいる
 その顔はもういつもと変わらない
 平然とした 冷静な顔


「・・・なんとか・・・大丈夫だよ」

 激しくつく息の合間から声を絞り出す


「・・・・・・」

 あたしの体に散った彼の痕跡を綺麗に拭かれ
 優しく唇を塞がれた


「・・・ん・・」

 そのままぎゅっと抱きしめられる
 さっきと変わらない 熱い体

 しばらくそのぬくもりを感じながら体を休めた



「とても・・・可愛かった」

「・・・・・・」

 さっきまでのひと時がよく思い出せない
 最後の方が特におぼろげで・・・
 現実だったのかすらあやふやだ


「・・・少し激しすぎたか?」

「激し・・・すぎるよ もう」

「おまえに求められるがままに従ったつもりだったが
もう少し加減してやっても良かったかもしれないな」

「やっ・・・あたしそんなこと言ったつもりは・・・」

「すごく・・・伝わってきていたぞ」


「・・・むう」

「くくく・・・」

 優しい笑みがあたしに向けられる
 その笑顔に少しどきっとした


 さっきまで情熱的だった彼女が
 あどけない表情を見せて膨れている
 それを眺めていると心が和む

 わたしを見つめる穏やかで柔らかい微笑み
 ・・その顔がずっと欲しかった

 ようやくおまえに手が届いた


「セレニティ
やっと今 おまえと一つになれた気がした
もう離さない 離したくない
ずっと・・・離れるな


愛している おまえだけを」

 もう・・・このぬくもりを手放したくはない


「デマンド・・・」

 彼の想いが心に迫ってくる
 その言葉からは嘘が微塵も感じられない
 すべて本心だと信じられる


「いいよ
ずっと・・・あなたの傍にいるよ」

 彼の愛情に包み込まれて
 あたしの胸の奥が満たされていくのが分かる


 ああ、そっか
 これってそういうことなんだ

 ふと
 自分の心がある事に区切りを付けてしまったと気が付いた


 彼の心を受け止めてしまった
 ・・・ついにあたしはまもちゃんを裏切ったのね

 体だけではなく
 心までがデマンドと向き合う覚悟を決めてしまった

 まもちゃんのことはまだ好き・・・
 多分 ずっと忘れられない

 でも
 今この瞬間も彼の愛情に触れて心が喜びを感じている




 もう 戻れない・・・


「デマンド」

「・・・セレニティ」

 瞳を閉じて彼の胸の中に寄り添った


 強引だけど寂しい瞳を持ったプリンス
 気持ちの伝え方が分からない不器用な人

 あなたの寂しさを埋めてあげたい
 孤独な心を癒してあげたい



 心の奥まで温まるように強く抱きしめた


「・・・温かいでしょ」


「ああ・・・
ずっとこうしていたい

しばらく抱いていても良いか?」

「うん・・・」

 そのまま、ぬくもりを確かめ合うように抱き締めあった



 ゆっくりとまどろみ
 意識が温かい闇に呑み込まれていく