「愛している・・・おまえだけを」
彼女の耳元でそっと囁いた
セレニティを愛している
それに気が付いてしまった
・・・彼女に気づかされた
人を愛するということが
こんなに心を満たしてくれるものだとは知らなかった
それを教えてくれた彼女が今、わたしの目の前に居てくれている
澄んだまっすぐな瞳でわたしをじっと見つめてくる
触れても もう怯えて逃げない
それだけでどれだけ嬉しいのか・・・
彼女は理解しているのだろうか
「・・・っ・・」
何も言わずただ抱きしめた
「・・・・・・」
セレニティもわたしの体を抱きしめてくれた
心臓の鼓動が胸に響く
しばらくそのまま抱き合い 互いのぬくもりを確かめあった
温かい滑らかな肌に触れていると
心の奥まで温かくなってくる
そのぬくもりを離したくなくて腕に力が入った
「・・・っ・・
ちょっと・・・苦しいよ」
きつく抱きしめすぎて彼女が小さく声をあげる
「!
・・・すまない
少し加減を忘れてしまった」
「・・・ん・・大丈夫」
名残惜しかったが一旦体を離した
「・・・・・・」
「・・・・・・」
デマンドがじっとあたしを見つめてくる
その瞳はすごく穏やかで優しい
少しずつ眼差しがあたしに近づいてきて そっと閉じた
唇が重なり合う
「・・・ん・・」
触れてくる唇が熱い
なんだか・・・すごく夢心地
「・・・・・・」
唇から伝わってくる彼女のぬくもりが心地良い
その温かさに夢中になりそうだ
ずっとこうしていたい・・・
「・・・ん・・・んんっ・・」
唇が中々離れない・・・
彼の愛情表現は始めのうちは軽くても
段々と激しくなってきて・・止まらなくなるみたい
「・・はあ・・・ちょっと・・待っ・・!」
「・・・・・・」
唇が強く重なってきた
頭を押さえつけられて逃げられない
優しい所もあるけど・・・やっぱり強引だ
でも・・・なんだか悪い気がしない
求められている感じがする・・・
「・・・・・ぷはあっ
もうっ・・・長いよ!」
息を切らしながら顔を赤くして
少し怒ったような素振りを見せた
「・・・くくっ」
「何笑ってるのよ・・・」
「いや・・・
おまえ可愛いな」
「なっ・・・え・・」
「怒って膨れたり わたしの言葉に頬を赤くしたり
そんな表情も持っていたなんて・・・知らなかった」
「デマンド・・・」
ほんのり赤い頬に触れてみた
人肌の温かさが指先に伝わってくる
もっとこのぬくもりに触れていたい・・・
「セレニティ・・・
おまえが欲しい」
「・・・えっ」
「今すぐに
・・・いいか?」
「あ・・・あの」
その言葉にどきっとした
今まで何度もされてきたこと・・・
だけど、それはすべてただ一方的な行為ばかりだった
今・・彼はあたしに同意を求めている
それは、される事自体は同じであっても全然違う
あたしの体を彼に捧げるということ
・・・自分の意志で抱かれるということ
ど・・・どうしよう
いきなり言われても心の準備ができてない
すごく恥ずかしいよ
それに・・・
まもちゃん以外の人に・・・許したことがない
これからもずっとそうなんだと当然のように思っていた
・・・彼への後ろめたさが胸に重くのしかかる
覚悟がどうしても足りない
頭が混乱してる・・・
何て言ったらいいのか分からないよ
「・・・・・・」
「・・・セレニティ」
あたしの頭を撫でる優しい手
垂れ髪に指を通して流れるようにおりてくる
その先に唇を寄せてきた
「今は・・・
目の前のわたしだけ見ていて欲しい」
「!!」
心の内を見透かされていた
あたしの迷いを理解して上で
それを受け止めようとしてくれている・・・
どうしよう・・・その心がすごく嬉しい
愛されて
求められている事実があたしの心の奥を熱くしていく
あたしを愛しているとやっと言ってくれた
その言葉が嘘ではないのは信じられる
・・・今のあなたなら身を任せても良い気がする
「・・・あの・・」
「何だ?」
さっきからずっと熱っぽい瞳であたしを見つめてくる
その瞳にどんどん吸い込まれて・・・逃げられない
大きく一回 心臓が動いた
「・・あ・・・」
緊張して言葉が出ない
「・・・・・・」
デマンドがそんな戸惑うあたしの姿をずっと見守り続けている
勇気・・・出て
「優しく・・・してくれるなら
・・・いいよ」
小さく頷いた
「・・・・・・」
「・・・・・・」
頬を赤くして下を向いたままじっとしている
その恥らう姿が可愛らし過ぎる
今・・・彼女の中で大事な決断をしたのが伝わってきた
その覚悟を無駄にはさせない
うつむいたままの顔をそっと持ち上げた
「・・・っ・・」
緊張して肩が強張っている
少し怖がる青い瞳に微笑みかけた
「分かっている
とびきり優しくしよう」
「デマンド・・・」
彼女がゆっくりと瞳を閉じる
「・・・・・・」
「・・すべて任せておけ」
わたしを待つ唇にキスをした
「・・・ん」
優しく触れてくる唇に溶かされて腕の力が抜けていく
そのまま ぱたりと力なく落ちた
「愛している・・・セレニティ」
強く抱きしめ
光り輝く髪の間に手を通す
「・・・・・・」
片手で上半身を支えられた
・・・心臓が痛いくらいどきどきしている
少し怖いけど・・身をゆだねて彼の胸の中に寄り添った
髪を撫でる手がゆっくりと頬に触れてくる
指先で顎を軽く持ち上げられた
「・・・・・・」
見上げると優しく微笑む瞳と目線があった
静かに瞳が近づいてくる
目を閉じて唇を待った
「・・・ん・・」
何度も重なってくる彼のぬくもり
頬にも軽く触れ その唇が首筋から肩を伝っていく
肌を味わうように唇が動いてくる
・・・いつもと違う
触り方も 唇の動きも
こんなに優しく触れることができる人だなんて知らなかった
胸が・・・締め付けられる
そっと胸元に手が降りてきた
ドレスの上から膨らみを撫で回される
「・・・っ・・・」
少し緊張して体が硬まった
「・・・大丈夫だ」
優しい声が耳元で囁く
胸元に触れていた手が一旦離れ
腰をさすりゆっくりと太ももを撫でた
・・・その間も、何度もキスが唇を塞ぐ
「・・・はあ・・」
抵抗も一切せず愛撫をすべて受け入れていると
体の奥が段々熱くなってきた
デマンドの手があたしの背中へ回る
そのまま少しずつドレスを脱がし始めた
「・・・っ」
肌が露出していく・・・
背筋を指先が伝うと体がぞくっとした
「んっ・・・ああっっ」
艶っぽい声が彼女の口から漏れる
わたしの腕の中で酔いしれているその顔に夢中になりそうだ
彼女がわたしに身を任せているこの光景が信じられない
夢でも見ているのか・・・
「・・・可愛いな」
華奢な体を強く抱きしめた
「あ・・・」
あたしの肩を愛おしそうに抱きしめてくる
素肌に触れる手がすごく温かくてまどろんでしまいそう
そのまま
彼の手がドレスを下ろしていく
・・・衣の擦れる音がする
足の先から引き抜かれ
はらりと床に落ちた
何も身に着けていないこの状態になって
これからされる事がいきなり現実味を帯びてきた気がする
・・・体が緊張して強張ってきた
肌を見られるのが恥ずかしくて
すがりつく様にデマンドに抱きつく
「セレニティ・・・」
「・・・・・・」
わたしの体にしがみついたまま
呼びかけにも答えない
・・・彼女の体が震えている
怖がっている体と共にベッドに倒れこんだ
「・・・・・・」
落ち着かせようと
しばらく抱き締めて頭を撫で続けた
「・・・・・・」
どうしよう・・・
動悸がとまらない
心の動揺を沈めようと必死に深呼吸を繰り返しても
体の奥から震えが湧き上がってきてそれを止められない
「・・・・・・」
「・・・・・・」
彼女の状態を配慮すれば
今日はこれ以上は止めた方が良いのかもしれないが
・・・そこまでわたしは紳士ではない
「このままでは何もできない
・・・少し離れろ」
「あっ・・・やだ・・」
しがみつく両腕を体から引き離した
「・・・・・・」
あたしを真顔でじっと見下ろしている・・・
思わず両腕を組んで肌を隠した
「もっとよく見せろ・・・」
「やだ・・あんまり見ないで
・・・そんなにスタイル良くないから」
じっと凝視する視線に耐えかねて目線を伏せる
「・・・綺麗だ」
「!?」
その言葉にどきりとした
「え・・・あの・・・」
恐る恐る彼を見上げる
まっすぐで・・優しさに溢れた笑顔があたしに向けられていた
「すごく綺麗だ・・・」
指先が首筋を撫で
硬くなったあたしの両腕をそっと解きほぐす
「透き通る白い肌
何度もこの肌に触れてきたが・・・
こんなに美しかったのだと初めて気が付いた」
「デマンド・・・」
「セレニティ
これからする事はお互いをすべて曝け出してする行為だ
・・・あまり怖がるな」
その真剣な熱いまなざしに不思議と心が落ち着いた
今まで止まらなかった震えが嘘のように治まる
あたしのすべてを彼の前に差し出す
・・・改めて考えるとすごく勇気がいる事だ
でも 決して怖いことではない
怖くて震えているのではなく
勇気が少し足りなかっただけ・・・
彼の心を受け入れる覚悟が・・
・・・その覚悟はもう決めたはず
「・・・・・・
ならあなたも・・・見せて
あたしにすべて」
「・・・・・・」
あたしの言葉を聞いて、デマンドが柔らかく微笑んだ
そのまま何も言わず服を脱ぎ始める
肩に手をかけマントを外し、床に落とした
そのまま上着に手がかかる
「・・・・・・」
その様子を目を逸らさずにずっと眺めていた
少しずつ肌があらわになっていく
身を包むものをすべて床に落とすと
あたしを見下ろした
「・・・・・・」
彼の陰になって頭上の光が遮断される
「・・・わたしに触れてみろ」
「・・・・・・」
そっと 厚い胸板に触れてみた
心臓の温かい鼓動が手のひらに直接伝わってくる
とくん とくんと心地良い音がする
「聞こえる・・・あなたの音」
「もっと・・・聞かせてやろう」
「・・・あっ」
そのまま温かいぬくもりが覆い被さった
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