もういやだ
 誰か・・・助けて!!

 あたしの心が悲鳴をあげている



 一筋の光も届かない暗黒の星・・ネメシス
 ここに連れ去られてどのくらいの時間が経ったのだろう

 みんなを助けるのと引換えに
 あたしはあの人に捕らえられた・・・


 身一つで暗黒パワーに包まれたこの場所に放り出され
 あとは残された力で生き延びるだけ・・・

 こうしている今もどんどん体から力が抜けていく
 いつあたしは朽ち果ててしまうのだろうか
 ・・・考えるだけで恐ろしくてたまらない





 もうすぐ夜が来る

 暗黒の星にも夜はある
 時計も・・・光もないから時間の感覚なんて分からない
 でも、夜なんだと言うことは感じる

 体のエナジーが疲労で抜けて来る頃
 ・・・彼がやって来る


コツ・・・コツ・・・

「!!」


 遠くから響いてくる靴音
 全神経が耳に集中する

 それが近づいてくる度に
 心臓の音も比例して大きくなっていく
 それはもはや あたしへの合図

 ・・・苦痛の時間がやってくる


 目的地に辿り着き、音がピタリと止まった
 ゆっくりと扉が開かれる

 闇の中から白い影が浮き出た

 すらりとした長身
 全身を白で統一した服に紫色のマント
 銀色に輝く髪の間から
 邪黒水晶のピアスが見え隠れする


「プリンス・・・デマンド」

 あたしをここに連れ去ってきた張本人
 暗黒パワーに包まれたこの星を支配している闇のプリンス


「・・・・・・」

 無言のままこっちへ近づいて来た
 その足取りを追うかのようにマントが翻りながらついてくる



「・・・来ないで」

 冷や汗がにじむ
 逃げる場所もなくて
 ただそれを待つだけなのが悔しい・・・

 二人の距離がどんどん縮まっていく



「・・・あ・・・」

 遂に目の前へ到着した
 あたしのすぐ横に腰を下ろす

 ベッドが重みで軋んだ


 彼との距離はもう1mもない


「・・・・・・」

 無言の威圧感・・・
 鋭く、冷たい瞳に睨まれて体が硬直する


 ゆっくりと腕がのびてきた


「・・・それ以上あたしに近づかないで」

 力ない声しか出て来ない・・・
 震える体を自分で抱き締めた


 一瞬
 近づいてくる腕の動きが止まった


 ・・・あたしの願いを聞き入れた?




「・・・・・ククッ」

「!!」

 デマンドの瞳が嘲笑うように笑みを浮かべ

 そのまま
 紫色のマントがあたしに覆い被さった


「いやっ・・・いやあっ!!」

 夜ごと繰り返される乱暴な行為

 体のエナジーが抜けていて抵抗もろくに出来ないあたしに
 ただ一方的に迫ってくる


「んっ・・・んん!」

 あたしの気持ちを一切無視したキス
 それに抗おうと
 力の限り必死に体を引き離そうとした
 その抵抗する弱々しい両腕を強く捕まれる

 ・・・身動きが取れない


「やめてっ・・・んっ・・」

 冷たい唇が強引にあたしの唇を塞ぐ
 拒否しても何度も繰り返される
 愛情の欠片もない・・・なんて冷酷なキスなの

 胸の奥が悔しさで熱くなる
 感情が高ぶって涙が溢れた


「やだ・・・もうこんなの・・・

・・・っく・・ひっく・・・」

 すすり泣く声が漏れる




「クククク・・・」

 冷たい笑い声が耳の奥にまで響いてきた


 ・・・先ほどから黙って様子を見ていれば
 ろくに抵抗も出来ず、ただ泣きわめくだけ
 なんてちっぽけな存在だ

 これが将来、ネオクインセレニティとして
 地球に君臨するとは・・・
 とても信じられん



「その泣き声

・・・実に心地良い」

 ゾッとするような低い声
 冷たい眼差しの奥に怒りの炎が燃えている
 ・・・強い憎悪があたしに向けられていた


 今はこんなに無力な小娘でも
 ネオクインセレニティであることに変わりはない

 彼女の手首を捕む手に力が加わる


「痛っ!」

 強い指が食い込んでいく・・・
 手首の骨が軋む音がする


「我が一族をこのような辺境の星に追いやったのはおまえだ
セーラームーン

いや、未来のネオクインセレニティ」


「や・・・離して・・」

 心臓が凍り付きそう・・・
 全身が恐怖で震え出す


「わたしからすべてを奪った
だからおまえからもすべてを奪ってやる

・・・身も心もすべてだ」

 乱暴に体を突き倒す
 そのまま彼女の体がベッドに倒れこんだ


「・・うぅっ・・・

・・・・!!」

 慣れた手つきでドレスを脱がしにかかった


「いやだっ・・・やめっ・・・」

 ・・・言葉では抵抗するけれど
 毎晩のその行為に、体は諦めていて動かない
 力の限り抵抗したとしても最後にはあっけなく脱がされる


 ドレスを剥ぎ取られ、床に投げ捨てられた
 肌があらわにされる


「・・・・見ないで・・」

 いつもこの瞬間が苦痛でたまらない
 何もまとわない姿で彼の前に晒されている
 ひどい屈辱だ

 ・・・こんな人に見られたくない


「・・・・・・」

 そんなあたしの姿を見下ろしながら
 デマンドが自分の肩からマントを外しにかかった

 バサッと音がして床一面に紫の世界が広がる


 ・・・そのまま胸元を緩めて上着を脱ぎ始めた

 一連の動作を見つめていると
 それを待っているかのようですごく腹立たしい・・・
 体を背けて身を縮めた

 服が床に落とされていく音だけが耳に入ってくる


 ・・・悔しい
 どうしてこんなひどい事ができるの?





 床に落ちる布の音が止んだ


「・・・こちらを向け」

「いや・・・いやよっっ」

「いい加減あきらめたらどうだ?
もう何度わたしに抱かれたと思っている」

「いやっ!

・・・あっ・・」

 両腕を捕まれて体を開かれた


「・・・セレニティ」

「!!!」

 愛しいあの人とは違うぬくもりがあたしに覆い被さる


「やだっ・・・・・・いやあ!!」