「長い髪だな」

 ふと
 デマンドがあたしの髪に触れた


「何よ・・急に」

 細くて柔らかいまっすぐな髪
 触れると手にしっくりと馴染む

「どのくらい前から伸ばしているのだ?」

「うーん・・・

そんなのよく覚えてない
もうずーっと前からよ」

 頭が揺れる度に金色のしっぽが光に透けて輝く


「金色にも黄色にも見える

不思議な色だな」

「・・・・・・」

「どうした?」

 青い瞳がこちらをじっと凝視している


「・・・あなたの髪も不思議な色ね
白いんだとばかり思ってたけど
うっすらと青みががかっていて
光の加減によっては透き通った水色に見えるわ」

 髪を優しく撫でられた

「・・・そうか?」

「うん

・・・何だか綺麗な色」

 わたしの髪を見つめたまま
 にっこりと無邪気な笑みを浮かべる


「・・・・・・・・・」

「どうしたの?」

「いや・・・

何でもない」

 ・・・不意打ちされた
 わたしへ向けられたその笑顔が
 あまりに可愛らしくてどきっとした


 思わず背を向ける

「・・・?
変なの」


 顔がまっすぐ見れない
 今更こんなことで動揺してしまうとは・・・


 あたしの方を向いてくれない・・・
 いつもと違って背中が隙だらけ

 ・・・・・・・・・


 これは・・・



 チャーーーンス!

 あたしの目が鋭く光る


 いつもからかわれてばかりだけど
 もしかして初めての報復ができるかもしれない

 ふふふ・・・見てなさいよ



「・・・デマンド」

 前に回り込んだ


「!

・・・何だ?」

 その無邪気な笑顔が
 至近距離で覗きこむ


「デマンドの髪の毛さらさら

・・・綺麗」

 優しく髪に触れる


「・・・・・・」

 心地よい指の感触が髪を通じて伝わってくる


 可愛らしい唇がそっとささやいた

「ねえ・・・

目を閉じて」


 深い青の瞳に吸い込まれて目が離せない

 彼女の言われるがままに目を閉じた

「・・・・・・」

「そのまま・・・動かないで」


 ・・・ひっかかった
 目を閉じたままあたしの行動を待つ彼の姿が可愛すぎる
 ついにやけてしまう

 さーて、どうやって遊んじゃおうかなっと


 ・・・よし!

 前髪をつまんで
 そのまま三つに分けて織り込んでいく

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・


「完成!」

「・・・?」

「目、開けていいよ」

 そっと目を開けた
 得意げな顔をしたセレニティが目の前にいる

「中々かわいいじゃない」

「・・・!

何だこれは」

 前髪に違和感を感じる
 視界の隅に髪の束が見えた


「三つ編みだよん」

 嬉しそうに にやにや笑っている


 ・・・やっと事態が飲み込めた

「セレニティ・・・」


「おにーさん

・・・他に何か期待してたの?」


 やられた・・・

 勝ち誇った顔がわたしを覗きこむ


「やってくれたな・・・」

 デマンドがむっとしながら髪の毛をほどく

 彼の悔しそうな顔がたまらない
 あたしに勝利を確信させる

 初勝利の快感に酔いしれそう


 生意気な瞳がこちらを嬉しそうに見つめている

「・・・随分と楽しそうだな」


「あたしの魅力にくらっときたんでしょ
きゃははは

・・・あっ・・・!」

 腕をつかんで引き寄せた


「な・・・何?」

「・・・忌々しい唇だな

黙らせてやろうか」

 両手で頬を包み込み顔を近づける


 ・・・キスされる
 近づく瞳にどきっとした

「・・・・・・」

 目を閉じてキスを待つ


「・・・・・・

・・・やめた」


 頬から手が離れた

「!

何よ・・・
別にいいもん」

 仕返しのつもり?

 そっぽを向いて立ち上がる



「・・・セレニティ」

「!!」

 後ろから覆い被さるように抱き締められた

「・・・何よ」

 抱きしめている腕の力が強くなる
 そっと耳元でささやかれた

「キスもいいが・・・
そのままじっとしていてごらん」