ここにきて一体どれくらい経ったのだろう
時間の感覚が分からなくなりそう・・・
どこまで歩いても果てのない回廊
空に光がないだけでこんなに不安になるなんて・・・
体からエナジーがどんどん抜けていくのが分かる
このままずっと地球に戻れなかったら・・・
考えただけでぞっとする
・・・あれは・・デマンド?
柱の影に隠れてそっと様子をみてみる
玉座に座って何か飲んでいるみたい
・・・一人で寂しくないのかしら
「・・・!
セレニティか?」
!!!見つかった!
「隠れなくてもいいだろう
こちらに来ないか?」
「け・・結構よ・・・!」
これ以上振り回されてたまるもんですか・・・
「話し相手くらいなれ
・・・何もしないから」
「・・・本当に?」
「・・ああ」
デマンドはいつも一方的に強引で
そういえばまともに会話をした記憶がない
話をすれば少しはこの人の考えていることが分かるかもしれない
・・・少しだけなら大丈夫よね
恐る恐る近づいてくる
・・・あからさまに警戒してるな
「そんなに遠いと話もできない
もっと寄れ」
「・・・」
言われるままに一歩一歩近づいてみる
グイッ
「あっ・・・!」
腕を引き寄せられ膝の上に乗せられた
「ちょっと・・・!
こんなに近くなくていいでしょ」
「体力もあまり残ってないのだろう
大人しく座っておけ」
「・・・・・・」
話が続かない
・・・沈黙が続くと変に緊張しちゃうよ
「・・・長い髪だな」
「!!!」
「輝く金色の・・・月と同じ色だ」
髪の先を撫でる感覚が伝わってくる
・・・どうしたらいいのか分からない
不思議だ
こうしているだけで心が安らぐ
この気持ちは何だ・・・
「セレニティ・・・」
!!!
髪の先に唇を寄せる
「あ・・・」
まっすぐあたしを見つめる瞳
どうしよう・・・目が離せない
・・・デマンドの顔が近づいてくる
「!!やめてっ
・・・何もしないって言ったでしょ」
「・・・キスもだめか
今更そんなことで恥ずかしがる間柄ではないだろう」
「は・・・話をするんでしょ!」
さっきからデマンドのペースに押されている気がする
気を抜いたら・・・危ない
「何を飲んでいるの?
お酒?
・・酔っているの?」
「これくらいでは酔わないさ
飲むか?」
「えっあたし?
・・・未成年だからだめだよ」
「・・・・・・くくく」
笑われた!
こどもだと思われた
・・・なによ
「・・・いただきます!」
グラスを奪って口をつける
「ん・・・!
・・・ごほっごほ」
お酒自体初めて飲んでみたけど・・強い
「無理をするな」
「・・・おかまいなく!」
残りを口に流し込んだ
「ごちそうさまでした!」
グラスをつき返す
「・・・くくく」
「・・・何がおもしろいの?」
「いや・・・気の強い女だな」
こんなに笑ったのは久しぶりかもしれない
「おまえといると・・・退屈しないな」
「おしとやかじゃなくて残念でした
幻滅したところであたしを帰してくれません?」
「おまえ・・・もう酔ったのか」
「そんなことはない・・・ですよ?」
頭がくらくらする・・・
けどなんだかふわふわして・・・変な感じ
「・・・ベッドに連れて行くから少し休め」
「大丈夫です・・よ・・・ふふふ・・・」
「・・・大丈夫なわけがないだろう」
「・・・ねえ・・・デマンド」
「・・何だ」
「デマンドは・・・寂しくないの?
こんな光も届かない場所にずっといて」
「そうだな・・・
少し前まではわたしをここに追いやった者を
随分と憎んでいたが・・・
もうどうでも良い気もする
・・・欲しかったものは手に入ったしな」
「・・・・・・」
「おい・・聞いてるのか?」
「ん・・・・・・むにゃ」
・・・信じられない女だな
無防備にも程がある
「起きろ・・・
襲うぞ?」
「・・・・・・ん・・・
まも・・・ちゃん・・・」
・・・・・・
この期に及んでまだあの男のことを・・・
まあいい
今や彼女はわたしの腕の中
「せいぜい今のうちに夢の中で会っておくんだな
・・・すぐに忘れさせてやろうぞ」
その唇を重ねて封じた
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