「少し具合がよかったからと
動いたりするからこんなことに・・・」

 セレニティを部屋に戻し
 ベッドの横で彼女の顔を覗いた

 自分の唇に触れてみる
 ・・・まだ彼女のぬくもりが残っている気がした

 なぜだ・・・何を考えてあんな
 不可解な女だ


「・・・・・・」

 頭に触れてみた
 いつもしているようにそっとなでてみる

 白い月のパワーなど
 邪黒水晶のパワーがあふれたこの星ではすぐに力尽き
 どうせ永くは体がもつまいと思っていた
 それまで弄べば満足すると思っていたが・・・
 何だ・・・この気持ちは


 ・・・・・・

 目が覚めたらデマンドの心配そうな顔があった
 こんな顔もできるのね・・・

「大丈夫か?・・・あまり無茶をするな」

「いつも・・・
あたしの頭を優しく撫でてくれてたのは・・・あなただったんでしょ?」

「!?」

「そんな一面もあるのに、なんでいつも何も言ってはくれないの?」

 ・・・気が付かなかった
 彼女はわたしの言葉をずっと待っていたのだ
 わたしの・・・想いを知りたがっていた

 今 初めて彼女に触れた気がする
 初めからただ一言伝えていればよかったのか

 その青い瞳をじっと眺めてみた


「・・・・・・」

「・・・・・・」

 紫紺の瞳があたしを見つめてくる
 寂しさが溢れた孤独な瞳で・・・


「セレニティ


愛している」

「やっと・・・言ってくれた」

 その瞳に微笑みかける

 強引だけど寂しい人
 気持ちの伝え方が分からない不器用な人
 やっとその心の内を知ることができた


「・・・・・・」

 何も言わずにそっと彼女の肩を抱き寄せてみた
 その体はもうわたしから怯えて逃げない

 こんな簡単なことだったのか・・・
 一番大事なものをやっと手に入れたような気がする




 その夜
 あたしは初めて真の意味でまもちゃんを裏切った
 デマンドの愛を受け止めてしまった

 不思議だ
 セレニティといるだけで心が満たされる
 これが人を愛するということなのか

 デマンド
 あなたの寂しさを埋めてあげたい

 例えそれが、まもちゃんを裏切ることになってしまっても