・・・・・・

 あたしは・・・死んだの?


「・・・痛っ」

 体に激痛が走った
 ・・・生きている

 何が起こったのか思い出せない
 ものすごい衝撃で吹き飛ばされた記憶はある
 炎に撒かれたと思ったけど・・・

 どこも燃えていない





 !
 みんなは・・・


「・・・ん・・・」

 ちびうさ・・・まもちゃん
 みんなも無事だ

 良かった












 ・・・!!

「・・・く・・・」



 全身が凍りつく
 ・・・振り向けない

 あの瞬間
 目の前が赤に包まれた時
 一瞬何かに守られた気がした

 まさか・・・








 恐る恐る体を向ける

「デマ・・ンド」



 目の前にある光景が信じられなかった

 ズタズタに裂けた服
 そこから溢れ出す真っ赤な血が見る見る白を染めていく

「・・・う・・そ・・・」

 あたしをかばって・・・?

 ・・・どうして




「・・・や・・・いやよ・・・

こんなの嫌よ!!!
いやあああああ」

 体の奥から叫び声が沸きあがる

 心が悲鳴をあげてる


「・・・お願い
目を・・目を開けて!!」

 あたしのせいでこんなの・・・嫌だよ!

 こんなのってないよ!!





 ・・・・・・

 わたしはどうしたのだ
 何があったか思い出せない


 ・・・・・・



 体が思うように動かない
 息が・・苦しい



 ・・・そうだった
 セレニティの前にとっさに身を乗り出して・・・







 遠くでわたしを呼ぶ声がする


「・・・セレニティ」

「!!!」

 かすかに震える声が聞こえた

「・・・デマンド

デマンド!!」

 意識が戻った!


「・・・わたし・・は」

「もういい・・・しゃべらないで
あなたすごい怪我してるのよ!」

 真っ青な顔・・・
 とにかく血を止めないと
 ・・・どうしよう・・・どうしたらいいの




 目がかすむ・・・
 セレニティの顔がよく見えない


「体を・・起こしてくれないか」

「・・・デマンド」

 そっとあたしの胸に抱き寄せる


 温かい肌の感触
 少し速い心臓の鼓動が伝わってくる


 体が・・・冷たい

 どうしよう・・・このままじゃ


「・・・セレニティ

おまえから光を奪い
闇に閉じ込めようとした罪は
一生かかって償うつもりだったが

・・・それは果たせそうだ」


「何を・・・言ってるの
・・・いやよ 変なこと言わないで・・
あたしを置いていかないで!


・・・あなたを愛しているのよ
お願いだから・・・傍にいて」


「その言葉が・・・ずっと聞きたかった」

「デマンド・・・愛してる」

 震える声
 わたしのために泣いてくれるのか
 こんなわたしのために





 ・・・視界が段々狭くなっていく

「どこに・・・いる」

「!!

・・・ここに・・いるよ?」

 血が止まらない・・・



 あたしはあまりに無力だ
 こうして手を強くにぎることしかできない

 悔しいよ・・・


「デマンド・・・」

 温かい涙が冷たい頬に落ちてくる

 そんなにわたしのために泣くな・・・

 悲しませるつもりはなかったのに
 最後まで泣かせてしまうことになった







 ・・・分かる
 もうわたしにはわずかな時間しか残されていない

 何を伝えればいいのだろう






 ・・・愛している

 最後まで残った
 たった一言の真実



 ・・・それではだめだ









「・・・早く・・戻れ

・・・闇に呑みこまれる前に・・・
光の世界へ」


 セレニティ・・・ 愛している




 ・・・・・・・・







「・・・デマンド?」

「・・・・・・」

「デマンド・・・」

 冷たいからだが・・・
 あたしの胸にうなだれる

パタリ

 手が力なく地面に落ちた



 ・・・・・・

 「デマンド・・・」


 あたしの声 届いてる?

 ねえ?


 ・・・・・・・・・・・・・






「や・・・

いやああああああ

いやあああああああああ!!」


 胸が・・・

 い た い



「いやだっ

こんなのいやああああああ!!!」


 感情の制御ができない
 今まで感じたことのない心の闇が体の底から沸き上がってくる


 知らなかった
 自分にこんな一面があったなんて

 心が闇に包み込まれていく




「なんて・・・凄まじい絶叫」

「うさこ・・・」

 悲鳴と邪黒水晶が共鳴している
 こんな彼女・・・見たことがない

「・・・私たちに止められるの?」


ドオン!!


「何!!」

「反応炉から莫大なエナジーが!!

・・・これは・・何なの?」

 地面が揺れる・・・

 反応炉の底から聞えてくる邪悪な声



つ か ま え た