・・・一体何が起こった?
たった今 目の前であった事実が信じられない
セレニティが・・・わたしを守った?
「うさぎ・・・ちゃん?」
「あたしは・・・
確かに最初はみんなを助け出すためにここに残った
でも今は違う
自分の意志でここにいる
あたしは暗黒の女王クイーンセレニティ
この星を脅かすものはあたしが許さない!」
「そんな・・・」
・・・意外だった
連れ戻しにきた仲間よりわたしを選んだというのか
自らを女王だと堂々と名乗る彼女
なぜだ・・・セレニティの中で何かが変わった?
何がそうさせたんだ
・・・分からない
あたしは・・・ずっと逃げていたのかもしれない
自分の変わり始めた気持ちから
みんなを・・・まもちゃんを裏切ってしまう罪悪感から
デマンドから愛されている事実に甘えきって
自分の心と向き合っていなかった
「ごめん・・・みんな
・・・まもちゃん
あたし デマンドを愛している」
今 何と言った?
「彼の傍にいてあげたい
・・・だから帰れない」
・・・・・・
わたしをまっすぐ見つめる瞳
彼女から目が離せない
「デマンド・・・」
想いを受け止めてもらう事が
こんなに幸せなこととは知らなかった
心が温かさで包み込まれる
「あたしのこと 愛してる?」
「・・・何度も伝えているだろう
分からないのか」
「・・・知ってる
嬉しい」
わたしにだけ向ける笑顔
やっとおまえを捕まえたのか
「あたしには
あなたとあの子がいればいい
・・・レディ いらっしゃい」
「はい お母様」
長い髪 すらりとした手足
ヒールの音を響かせてあたしの娘が姿を現す
「・・・あの瞳 あの頭
まさか」
「・・・ちびうさ」
「確かにそう呼ばれていた頃もあったわ
でももうあの時のちっぽけなあたしじゃない」
「彼女はブラックレディ
あたしのたった一人の大事な娘
邪黒水晶の暗黒パワーで生まれ変わったのよ」
辺りが静まり返る
・・・みんな驚いてるよね
「・・・違う」
その静寂を打ち破る声
「・・・まもちゃん」
「それは本当の愛じゃない
自分のエゴで洗脳して操ってるだけじゃないか
・・・君は本当にそれで満足なのか」
!!!
「そうよ・・・違うわうさぎちゃん
その子はもうちびうさちゃんじゃない
あなたの大切な存在を
どうして消し去ってしまったの」
・・・分かってた
レディをここに留めておいておくこと
そのために暗黒パワーで洗脳したこと
すべてあたしの身勝手だって
そんなこと初めから分かってた!
彼女からラビットを奪ったのはわたしだ
そして希望と光も奪い
誰にも触れさせないよう暗い闇の中に閉じ込めた
すべてわたしの罪だ
それを一生背負う覚悟はセレニティを手に入れた時に決めていた
罪を犯してでも
どうしても傍に留め置きたかった
・・・やっと手に入れた安らぎを手放したくない
「マーキュリー・・分析を」
「彼女からすさまじいマイナスエネルギーが放出されている
その大元は・・・あれよ!
邪黒水晶のピアス!!」
「・・・みんな
ちびうさちゃんを取り戻すわよ!」
「そんなことさせないわ!
レディ!こっちに来なさい」
「シャインアクアーーイリュージョン!」
「!!!」
「うさぎちゃん、目を覚まして!」
「セレニティ!!」
「待ちな!
あんたにはあたしが相手だよ!
スパークリング ワイドプレッシャー!!」
「くっ・・・」
・・・近寄れない
「マーズ 行くわよ!!」
「ええ!!」
「!!!」
「クレッセントビーーーム!!」
「ファイヤーーソウル!!」
パリーン!!
両耳の邪黒水晶が破壊された!
空中に黒い欠片が砕け散る
「キャアアアア!!」
「レディ!!」
「タキシード仮面!
ちびうさちゃんを受け止めて!」
気を失ったブラックレディがゆっくりと落ちていく
額の黒い月が消えていくのが見えた
「ちびうさ!!」
ドサッ
小さな体が受け止められる
「ちびうさちゃん!」
「・・・まも・・・ちゃん?」
「大丈夫よ!
・・・良かった」
「いや・・・ちびうさを返してっ」
「うさぎちゃん!お願い、目を覚まして」
「あなたの一番大事なものを思い出して」
「・・・ちびうさちゃんにはあなたが必要なのよ」
「・・・いやっ・・・いやあっ」
必死で首を振る
何かを振り切ろうとしているように
今 気付いた
わたしの身勝手な愛情が彼女を苦しめている
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