「早くわたしの元に戻って来い セレニティ」

 表向きは平常心で見送ったが・・・
 何だ このいいようのない不安感は

 セレニティが地球に向かってから数時間が経った
 もう戻ってきても良いはずだ



 ・・・何を怖がっている?
 わたしは何に脅えているんだ


 ・・・彼女を失うかもしれないからか?
 あの男に会って心変わりするかもしれないと?

 だったらなぜ一人で行かせた



 ・・・例え戻ってこなかったとしても何度でも奪えばよいと思ったからだ
 何を犠牲にしても必ず奪い返す!





 いや


 信じたかった
 セレニティは必ず戻ってくると

 信じたいから敢えて一人で行かせた




 彼女はずっとわたしの傍にいると約束してくれたのだ
 あの男の所に戻るはずがない
 ・・・信じて待とう



 我が妻セレニティ
 永遠に愛すると誓った言葉に嘘はない

 誰にも渡さない
 誰にも触らせない
 あの笑顔はわたしだけのものだ

 失いたくない



 ・・・気づかされた
 わたしはこれほどまでにセレニティを愛してしまっていたのか






 ネメシス・・・あたしの永住の地
 まもちゃんを振り切って戻ってきた
 もう ここから出る事はないだろう

 ・・・それでいい
 ちびうさがいればあたしは生きていける

 まもちゃん・・・ごめんね




 ・・・デマンド?
 どうしたのかしら 元気がないみたい
 何か悩んでいるの?


「デマンド」

「!!
セレニティ」

 帰ってきた・・・わたしの元に!
 彼女の姿を見たら
 心を埋め尽くしていた不安が一瞬で立ち消えた

「どうしたの?
・・・スモールレディを連れてきたわ」

 はっと我に帰る

「ああ・・・分かった
ラビットは暗黒パワーで洗脳する
・・・いいな?」

「・・・ええ」
 それがここで生きていくための不可欠条件
 ごめんねちびうさ・・・道連れにする形になってしまって

「彼女を置いてくる
ここで待っていろ」

「・・・」




 ネメシス・・・
 どこまでも黒い闇に呑みこまれた静寂の星

 あたしに支配できるだろうか


 まもちゃん・・・

 別れのキスの感触がまだ残っている

 ずっと・・・忘れることはできないだろう


 セレニティが戻ってきた
 ・・・当然だ
 ここは彼女の安息の星だ
 わたしは信じて待っていた

 だが やはり不安だったのだ
 もしかしたら心変わりするのではないかと
 あの男に連れ戻されはしないかと

 心のどこかで彼女を信じられずにいた

 なぜだ


 ・・・分かっていた
 なぜこんなに不安なのか



 わたしがこんなに愛しているのに
 何度も言葉に出して伝えているのに

 彼女は一度も言葉にしてくれていない




 わたしを愛していると

 まだあの男を愛している
 その事実がわたしを不安にさせる


 ・・・それでも
 それでもおまえを愛している!
 絶対に帰すものか


 気が付いたら彼女の元へ駆け出していた
「セレニティ!」

「デマンド!
・・・どうしたの?息を切らせて」

「よく 戻ってきた」

 彼女の華奢な体を強く抱き寄せる
 柔らかい 温かい肌の感触

「一体どうしたの?・・・んんっ」

 その唇を激しく塞いだ


 いくら抱きしめてもこの不安が消えない
 どうしたらいいのだ


 熱い抱擁
 激しいキスで息をつくこともできない

 ・・・震えている?
 何かを恐れてるみたい

「・・・大丈夫」

 震える体を包み込むように抱きしめた

 この人の寂しさを埋めてあげたい
 ずっと あたしが傍にいるよ